HOME ボライベ 全国オンライン勉強会 第21回全国オンライン勉強会【松尾匡氏】

「積極財政論バッシングへの応え方」

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松尾匡氏

講師 まつお ただす さん

立命館大学経済学部教授。専門は理論経済学。

小泉新自由主義に対抗し、欧米のケインズ復活を紹介。リーマン後、反緊縮政策を民主党政権に訴え、アベノミクス時は野党敗北を警告するも、みな無視される中、唯一山本太郎に見出される。

2019年、積極財政候補者を応援する薔薇マークキャンペーンを立ち上げた。れいわ新選組誕生後は経済政策への助言をしている。

著書に『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)、『コロナショック・ドクトリン』(論創社)、『反緊縮社会主義論――脱成長論と帝国主義の超克』(あけび書房)等。



レポート🌟

第21回全国オンライン勉強会【松尾匡氏】2025.6.27(金)


「国の借金は将来世代へのツケだ!」「財政赤字は国を滅ぼす!」
そんな言葉をよく耳にしませんか?
でも実は「赤字」こそが、私たちの暮らしに必要なお金を生み出しているとしたら…?

今回の勉強会では、経済学者の松尾匡氏が、そんな“常識”に真っ向から挑みます🌟
キーワードは「赤字=お金を生む行為」。目からウロコの「お金の正体」とは?
松尾氏は、れいわ新選組の経済政策アドバイザーとしても知られ、経済理論と現実の差異を鋭く指摘してきた研究者の一人です。

司会はおなじみ、さかぐち事務局長😊

始めに、くしぶち本部長(共同代表)と大石共同代表の挨拶です。

全国の皆さん、こんばんは。いよいよ来週から参議院選挙。今月の講師はどうしても松尾先生にお願いしたくて、ようやく今日がその日となり、大変楽しみにしていました。積極財政バッシングへの応え方は、永田町の議員全員に聞かせたいほどの内容。代表が、合同記者会見で“生きるための闘い”と位置付けて、参議院選挙への決意をマスコミにもお話しました。みんなでより賢くなって、選挙を迎え撃ちたいと思います。松尾さん、今日はよろしくお願いします。

私が政治の世界に入ったのは、人間が人間らしく扱われていない社会を変えたかったからです。松尾先生には初期の頃から教えをお願いしていて、先生の話にはヒントがいっぱいあります。今の日本では、外国の方がいい思いをしているんじゃないかっていう思いに至ってしまう。でもこれは差別ではなく、みんなが豊かになる答えが必ずあるはずです。インバウンドや移民政策、介護や様々な問題に対して、先生の経済学をベースにしたアンサーを今日は聞きたいと思っています。よろしくお願いします。

それでは、松尾氏の講演内容をダイジェストでお届けします🌟



🌟現代のお金は「預金」が主役

まず知っておきたいのは、現代社会で使われているお金のほとんどは「現金」ではなく「預金」だということ。給料も、買い物も、電気代の支払いもほぼすべて銀行の口座上でやり取りされています。ではその「預金」とは、どうやって生まれるのでしょうか?


🌟銀行はお金を“作っている”!?

たとえば、ある企業(B製鉄)が工場を建てるために、銀行(A銀行)から1億円の融資を受けたとします。
このとき、銀行はB製鉄の口座に1億円をポンと記帳します。実際には現金を渡すわけではなく、帳簿上に数字を書き込むだけで1億円の「預金」が新たに誕生するのです。
これは「誰かのお金を貸してる」わけではありません。まさに「無から生まれたお金」です。
その1億円をB製鉄が建設会社(C建設)に支払うと、C建設の口座にお金が移動し、そこから社員の給料や資材費としてさらに使われていきます。
こうして最初に作られた1億円は、人々の口座を渡り歩きながら、経済を回していく資金になるのです。


🌟借金を返すと、お金が消える?

逆に、企業が銀行に借金を返すと、そのお金は帳簿上から消えてしまいます。返済=お金の消滅なのです。同じように、政府が税金で国債を返すと、やはり社会からその分のお金が消えます。だからこそ、不況時などには「借金を返すこと」よりも、「支出を増やすこと」の方が大切なのです。
現実には多くの企業や政府は、借りたお金を一気に返済せず、借り換えを続けていきます。つまり、「ずっとお金を使い続けている」状態。これによって、世の中にあるお金の量は一定に保たれているのです。


🌟借金を今返しても、後で返しても…結果は同じ?

「国の借金は、将来世代へのツケだ!」
冒頭でも書きましたよく聞くこの言葉。でも、経済の仕組みを冷静に見てみると、その“理屈”には無理があることが見えてきます。
仮に、国の借金を“将来の増税”で返すとしても、それが「将来世代に負担を押しつける」ことになるとは言えません。なぜなら、返すタイミングがいつであっても、将来世代が受け取る“相続される財産”は同じだからです。
今返せば、そのぶん現在世代が負担して、将来世代には少ない財産が残る。
将来返せば、今は負担せず、将来世代がそのとき返すかわりに多くの財産を相続する。
結局、どっちも将来世代の“取り分”は変わらないんです。
この考え方は、積極財政派だけでなく、主流の経済学でも“当たり前”の見方。だから「将来のために今増税して返済を」という話には、実は根拠がないのです。


🌟でも、今増税したらどうなる?

「じゃあ今、増税して返した方が安心では?」と思うかもしれませんが、 実際には、今の増税は不況を招く危険があります。
消費税が上がれば、みんなの消費は減る。企業の売上は落ち、失業が増え、子どもの進学を諦める家庭も増えるかもしれない。企業の設備投資も減って、将来の生産力にも悪影響が出ます。つまり、今の増税こそが“将来世代の足を引っ張る”行為になりかねないというわけです。




上記がお話いただいた主な内容の一部です✨

この他にも、
・国債の借り換えするにも、一回おカネを返す必要がある。その資金源はどうする?
・その国債を買ってくれなかったらどうする?
・無限に国債が出せると言っている?
・今のアメリカはインフレ抑制に苦労した!
・利払いが増えて財政を圧迫する!
…などなどの、様々な“バッシング”について軽快にお答えいただきました!

詳しく知りたい方は、アーカイブ映像をぜひご覧ください🌟



次は、皆様からの質疑応答タイム🌟
今回は寄せられた質問の中から、4つをピックアップしてご紹介します。


「他の先進国にも消費税(付加価値税)はありますが、経済成長しています。特にドイツなどは通貨発行権もないのに、なぜ成長できているのでしょう?日本との違いは?

ドイツは過去に好調だった時期がありますが、それは南ヨーロッパ諸国に借金をさせて輸出を伸ばしていたためで、持続可能な成長ではありません。実際に現在は経済が苦しい状況です。スウェーデンのように消費税が高くても成長している国もありますが、それは財政出動や金融緩和を同時に行い、輸出を促進してきたからです。ただし、こうした国々では、社会全体で消費をある程度抑える政策を取ってきた背景があります。つまり、個々の暮らしが豊かになるというよりも、消費を抑えた節度ある生活を共有することで経済を回していたとも言えます。我々が選択する選択肢としてそれでいいのかなっていうのはあるということです。

国はなぜ借金返済を優先するのですか?

一部には「借金は返すべき」という善意の思い込みがありますが、本質的には財界の意向が影響しています。つまり、「円高を維持し、海外で安く生産して利益を出す」ために、国債を減らし、金利を上げて円安を避けたいのです。さらに、国内景気が良くなると賃金が上がり、人手不足になるため、企業にとっては必ずしも国内景気が回復することが望ましくないという側面もあります。

財政緊縮派はなぜ消費税減税に反対しながら、法人税減税には賛成するのですか?矛盾していませんか?

新自由主義的な経済観では、「企業が設備投資を活発に行う環境を整えること」が重要とされており、法人税を下げることで投資を促進しようとしています。また、外国資本を呼び込み、生産性の高い企業に日本で儲けてもらうためにも法人税は低く抑えるべきだと考えられています。加えて、政治家と企業の癒着などの現実的な要因も背景にある可能性があります。

少子高齢化が進む中で、積極財政をしても経済効果は限定的では?という反論にはどう答えればいいですか?

確かに主流派経済学では、福祉などへの支出は生産性向上につながりにくいとされがちです。ですが、積極財政により完全雇用を実現すれば、失業者は減り、雇用の安定や賃上げも可能になります。福祉は労働集約的で雇用も生まれやすいため、少子高齢化の中でも効果は大きく、むしろ好ましい政策だといえます。


今回の勉強会について、ネット上でのご感想です👇
つぶやいてくださったみなさま、感謝です☆

◆松尾先生の貴重なお話しが見れて、ありがたかったです。今の自公政権や維新の政策では、弱者が一部の大金持ちのマネーゲームの食い物にされてしまうようで不安です。リーマンショックも貧しい人に高利で貸し、その返済金を証券化して複製し、米国だけでなく世界の資本家や金融ファンドに売りました。

◆国債発行をいうと、「将来世代にツケを残すのか〜!」と自民党を中心に言われますが、まったくの間違い。ケチケチ予算にして、公共投資を減らし、生産手段を衰えさせることのほうが、よっぽど将来世代へのツケです。。

◆国の財政出動なくして国民の繁栄なし。消費税は不況の時にも徴収できる安定財源とはよくいわれるけれど、税は景気の調整弁、「安定する、だからこそダメ」というのはなるほど、と。れいわ新選組の政策の良さを伝えたい。

◆もし本当に日本の財政がヤバイなら日本の長期金利(=10年物国債の利回り)はとっくに2%を超えてる。

◆今の緊縮派が言っているのは将来世代に借金を残すなではなく、結果的に将来世代を残すなになってる。​​財務省は緊縮財源で権限を振るうため知っててやってる。財務省はお金で支配する名人。

最後に大石共同代表、くしぶち本部長、さかぐち事務局長からのお礼とコメントです。

先生ありがとうございました。図で見せてもらった「経団連のビジョン」がすごくわかりやすくて、目が覚めました。資本家はグローバルに儲けることが目的で、私たち生活者や労働者のことなんて全然考えてない。むしろ“淘汰しようとしてる”っていう危機感を持たなきゃいけないと思いました。「リスキリング」や「雇用の流動化」って、言葉は聞こえがいいけど、実際には非正規化や低賃金化を進めてるだけ。介護なんかはその典型で、待遇を改善しないまま外国人を低賃金で使おうとしてる。このままだと、ほんとに国ごと滅ぼされるんじゃないかっていうくらい危機的な内容でした。こうした現実を、国会の中でも外でも伝えていって、逆の経済政策で押し返していきたいと思います。本当にありがとうございました。

松尾先生、今日は本当にありがとうございました。難しい話もありましたけど、すごく整理されていて、みんなで理解を深められたと思います。大石さんの話にもありましたが、今のまま気づかずにいると、私たち自身が淘汰されてしまう。本当に“生きるための闘い”が次の参議院選挙なんだという意識を、今日はみんなで共有できたと思います。れいわ新選組は移民政策には反対をするけれど、排外主義とは一線を画していく、両面をしっかり打ち出していこうという、唯一の立ち位置で闘っていきたいと思います。

ありがとうございました。私も以前グローバル企業で働いていたので、世界との熾烈な競争や「政治献金」とのつながりも実感していました。今日の松尾先生のスライドを見て、その構造がすごく腑に落ちました。私はキヤノンにいて、社員には優しい面もある会社でしたが、やはり政治はそういった一部の人たちだけでなく、残りの99%の人たちの幸せを、政治は考えていかなければいけないと改めて感じました。

今回の勉強会を通じて、日本の経済や財政の裏側がクリアに見えた気がします。特に、企業や財界の利益優先の流れに警鐘を鳴らしている点が印象的でした。積極財政の重要性を改めて考えさせられました。
こういう話をもっと多くの人に知ってもらうべく、私たちも身近なところから発信していきましょう!

松尾匡さん、そしてご参加いただいた皆様、遅い時間までありがとうございました🌟

松尾匡氏の著書もぜひチェックしてみてください!
 ↓
〇反緊縮社会主義論 脱成長論と帝国主義の超克 – あけび書房 2024/7/19
〇左翼の逆襲 社会破壊に屈しないための経済学 – 講談社 2020/11/18
〇左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議 – 青灯社 2019/6/17


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