HOME ボライベ 全国オンライン勉強会 第19回全国オンライン勉強会【末冨芳氏】

「『子育て罰』をなくそう」

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末冨芳氏

末冨 芳氏

日本大学文理学部教授。
専門は教育行政学、教育財政学。

京都大学大学院教育学博士課程単位取得退学。博士(学術)。
こども家庭庁こども家庭審議会こどもの貧困・ひとり親部会委員。文部科学省中央教育審議会臨時委員(第11期)。

子どもの権利を基盤とした政策を教育分野のみならず、あらゆる政策領域において推進するアクティビスト型の活動も展開している。



レポート🌟

第19回全国オンライン勉強会【末冨芳氏】2025.4.25(金)


「子育てをしたくてもできない」「子どもを持ちたいと思えない」
そんな思いが、今の日本では若い世代を中心に広がっています。

今回の勉強会では、「子育て罰」という言葉を世に広めたひとりであり、教育政策やこどもの貧困対策の専門家でもある日本大学文理学部教授の末冨芳氏が講演。
日本の子育てと貧困の現状、そしてそれを変えていくための具体的な提案について、データと現場の声を交えて語ってくださいました。

講師は末冨芳氏、くしぶち万里本部長、さかぐち事務局長の他、大石あきこ共同代表が参加



くしぶち本部長と大石共同代表の挨拶!

全国からご参加くださっているボランティアのみなさん、いつも本当にありがとうございます。今日はついに、こども・子育て政策や貧困問題の専門家として国会の中央公聴会や文科省、こども家庭庁などで活躍されている末冨芳さんをお迎えすることができました!日本ではこれまで、ずっと“大人都合”でこども政策が作られてきたというのが現状です。それを変えていくのが政治の力。今日は皆さんと一緒にしっかり勉強したいと思います。

先週、国会での文科委員会で末冨先生とお会いしたばかりなんです。教員の給与に関わる“給特法”の改正審議で、末冨先生は参考人として現場目線での教育政策の必要性を語っておられました。やっぱり、こどもや保護者、先生など“現場の声”を踏まえた政策が必要ですよね。私も“学校の先生に不払い残業、払ってください”って、委員会でずっと言ってきました。そんな末冨先生に、今日はZoomでじっくりお話いただけるということで、本当に楽しみにしています!

それでは、末冨氏の講演内容をダイジェストでお届けします🌟




🌟こども基本法とは?こども家庭庁のいま

2023年、日本で初めて「こどもは権利の主体である」と明記した「こども基本法」が施行されました。この法律の意義は大きく、岸田首相も「こども若者は権利の主体」と国会で明言。これまで“こどもには人権がないかのような”空気が強かった政治の世界でも、変化の兆しが現れています。
とはいえ、こども基本法の認知度はまだまだ低く、大人もこどもも法律の内容を知らないまま。そして、法律ができても、それを現場で活かす体制が整っていなければ、変化は実感できません。
こども家庭庁が取り組んでいる政策の中には、「校則の見直し」や「日本版DBS(性犯罪歴のある人物がこどもと関わらない仕組み)」の整備といった前向きな動きもあります。
体制の薄い省庁でもあり、分科会のメンバーも十分じゃないと思っている。今頑張っているので、足りないところは遠慮なく教えていただきたいとのことです。


🌟こども若者の貧困のリアルと、その対策

こどもの貧困率は11.5%、つまり「9人に1人」。
さらに、ひとり親家庭では2人に1人が貧困状態にあります。
こうした数字が示すのは、決して“特別な家庭”の話ではなく、私たちのすぐそばにある現実です。
特に深刻なのが「低中間所得層」と呼ばれる、支援の対象にはなりにくいけれど、日々の生活に余裕のない層。子育て世帯の6〜7割がこの層に入るとされ、体験や教育への“格差”がこどもたちに重くのしかかっています。
末冨氏は、「こどもへの支援は、現金だけでなく“人と物”のサポートが必要」と強調されました。
「こどもの貧困対策法」から「こどもの貧困解消法」に変更され、法律や制度は少しずつ前進しているものの、現場の実感とはまだギャップがあり、私たち一人ひとりの理解と後押しが欠かせません。


🌟「子育て罰」大国日本をどのように変えるか?

「子育て罰」とは、OECDの用語“チャイルド・ペナルティ”の和訳で、子育てをしている労働者(特に女性)が職場で不利な扱いを受け、結果的に貧困に陥りやすくなる構造のこと。日本では、ひとり親が「働けば働くほど貧しくなる」世界でも珍しい国の一つです。
その背景には、「こどもを持つのは個人の責任」「自分で何とかするもの」といった“自己責任”の価値観が根深く残っています。
たとえば、他の先進国では支援が手厚いイギリスでは、親が体を壊してまで働かないといけないような状況を「こどもの権利の侵害」として見直す動きがあり、生活保護や教育の無償化、放課後の支援などが充実しています。例えば、困ったときに頼れる“子育て版ケアマネージャー”のような専門職(ネウボラ)を配置することで、孤立や不安を減らせるといいます。
一方の日本は、制度も支援も不十分なまま。育児中の親に冷たい目を向ける「ぶつかり男」「ぶつかり女」といった社会的な空気も、まさに“親子に冷たい社会”の象徴です。




上記がお話いただいた主な内容です✨


こども基本法とは?
こども若者は権利の主体
こどもの最善の利益が優先
こどもたちの意見表明の権利、参画の権利
子育てに夢を持てる、子育ての喜びが実感できる社会に
こども若者のための財源は国が確保
笑顔の末冨芳氏



次は、皆様からの質疑応答タイム🌟
今回は特に多く寄せられた質問の中から、特に私たちの暮らしに深く関わる4つをピックアップしてご紹介します。
この他の質問や詳細はぜひ、アーカイブでご覧ください🌟


養育費の未払い問題について、日本でも源泉徴収のような制度を導入できないか?

基本的に導入すべきだと考えています。ただし日本では、協議離婚が多く、養育費の取り決め自体が法定義務になっていません。ようやく法務省も「取り決めをしましょう」と動いてはいますが、行政による徴収(源泉徴収・差し押さえ)まで実行している自治体はほとんどありません。韓国のように、免許取消や刑事罰を科す制度もありますが、持続可能性の観点では北欧型のシステムが理想的だと思います。

少子化はずっと前から分かっていたのに、なぜ有効な対策が打たれてこなかったのか?

子育て政策が後回しにされてきた背景には、政治の場に多様性がなさすぎたことがあると思います。とにかく女性議員が少なく、男性議員にも子育て当事者がほとんどいない。これは本当に致命的でした。私自身、子育てが一段落したからこそ、こうして国政の皆さんと対話することができています。でも、子どもが小さいうちはそんな活動なんてとても無理。だから、子育て当事者が“今”の政治に直接声を届けることは、実際ほぼ不可能なんです。私も子育て真っ最中だった時は、ずっとイライラと向き合ってきました。それでも「動かさなきゃいけない」と思って活動してきた。でもそれは、研究の時間も子育ての時間も削ってやっているわけで、決してオススメできることじゃありません。単純に“プレイヤーが少なすぎる”んです。国会議員側にも、民間側にも。

育児と仕事の両立が難しい。企業や社会にはどんな変化が必要?

政府では限界があるため、企業が長時間労働を減らすルールづくりが必要です。例えば、残業代が他国より安く設定されている日本では、企業は長く働かせた方が得。だからこそ、残業代を1.5倍にするなど、ルールを変えていく必要があります。また、ブラック企業の実名公開や、育休後の職場復帰を保障する制度(オーストラリアでは7年間)も重要です。男性の家事・育児参加が進まない現状もあり、たとえば平日の家事時間をたった30分増やすだけで、フランス並みに改善するという試算もあります。公立学校の教員の「残業ゼロ円」問題も同様で、残業代をちゃんと出すだけで、教育現場の人手不足も変えられます。

親世代と子育て観が合わず、特に「私たちもやってきたんだから」と言う母の言葉に苦しさを感じる。世代間の考え方の違い、どう向き合えば?

価値観の違う親世代を変えるのは難しいし、意見が変わらない人の意見を変えようとするのは結構苦しいことです。むしろ、同世代や少し距離のある人に話すほうが気が楽になることもあります。厚労省のデータを見ると、女性は仕事時間が増えても家事・育児の負担は減っておらず、男性の家事参加もまだまだ。昭和から今まで、男性の仕事時間は減っているのに、家庭での役割はあまり増えていません。だからこそ「その時間、少しでも家庭に使ってくれたら」と願う気持ちは強いです。時には家族とぶつかることもありますが、言い合える関係も大切で、私も祖母と介護のことでずっと言い争いをしていましたが、今となってはいい思い出です。


今回の勉強会について、ネット上でのご感想です👇
つぶやいてくださったみなさま、感謝です☆

◆岸田元総理はこども食堂応援視察してた。こども食堂などなくてもよい国にするのが、総理の仕事なのに。病院行けないから、保健室で我慢する子たちがいますよ。

◆義務教育はすべて無料にすべき。教育は明日へのパスポート。

◆これから結婚する人たちに低家賃で良質な住宅を保障すること、妊娠、出産、育児に対して十分な公費助成を法律で保障することが必要。

◆ひとり親の私にはいろいろ思い出してしまってかなりきっついお話。
でも私のころより今のひとり親さんたちはもっと厳しそう。悪政や無策が大きな要因😢

◆こんな状況で子育てをできる一人親なんていないよ。ひどすぎる。この話、限定公開ではなくて、日本人全員知っておくべきだよ。特に、国会議員!

最後に大石共同代表、くしぶち本部長、さかぐち事務局長からコメントが寄せられました。

こども基本法について、れいわは自民党案に反対しました。というのも、法案に「家庭に一義的な責任がある」とか、こども自身の権利が軽視されるような内容が盛り込まれてしまったからなんですね。今、国会では医療費を削ってこども予算になんて分断が進められていて、これは絶対に許しちゃいけない。こどもたちの未来のために、ちゃんと財源確保して、効果ある政策を本気でやれって、れいわは言い続けています。先生の立場と若干違うところはあるかもしれませんが、この現場主義だったり、ご自身も当事者ということでいろんなことを発信してくださり、今日も共通するところもあって、非常に学びになりました。

みんなでこども政策を集中して学べた貴重な時間になりました。
国会でも、岸田首相が「異次元の少子化対策だ!」と大騒ぎしていた頃に比べると、今はすっかり話題にすら上がらなくなってしまった。でも、現場は変わってない。先生のお話の中でも、「結局は財源の問題だ」っていうのが本当に大きくて、れいわとしては「消費税廃止」「教育完全無償化」「現金給付」など、やるべきことを全部提示しています。今のマイナスの状態を、せめてプラスに持っていく。それが最初の一歩だと、改めて思いました。

本当にあっという間に時間が過ぎたなという気がしています。この子育て支援というのは本当に日本社会の大きな課題でもあるし、全ての人に関わることだと思います。今回の末冨先生の話を一つの契機にして、ぜひみんなで関心を持って、権利を勝ち取っていく、そういう政治的な動きを我々もしっかりと果たしていきます。先生、本当に今日はありがとうございました。

今回の勉強会を通じて感じたのは、「こどもの権利」や「子育て支援」が、単なる福祉の問題ではなく、社会のあり方そのものを問うテーマだということです。
末冨氏の具体的なお話から、「制度は変えられる」という希望と、「そのためには声をあげ続けることが不可欠だ」という思いの強さを感じました。参加された方々も、自分ごととして深く考えるきっかけになったのではないでしょうか。

子育て中の方も、そうでない方も、「社会で子どもを育てる」という視点から、これから何ができるのかを一緒に考えていけたらと思います。今後の動きにつながる、大切な一歩になった勉強会でした。

末冨芳さん、そしてご参加いただいた皆様、遅い時間までありがとうございました🌟

末冨芳氏の著書(共書)もぜひチェックしてみてください!
 ↓
〇子ども若者の権利と学び・学校 – 明石書店 2024/9/13
〇子ども若者の権利とこども基本法 – 明石書店 2023/10/22
〇子育て罰「親子に冷たい日本」を変えるには – 光文社 2021/7/13


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