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伊勢崎賢治氏

東京外国語大学名誉教授。

平和学研究者。専門は平和構築・紛争予防。国際NGOでインドのスラムでの住民運動の組織化やアフリカでの開発援助に携わる。国連PKO上級幹部として東ティモールで県知事を務め、アフガニスタンでは武装解除を指揮。

著書『本当の戦争の話をしよう:世界の「対立」を仕切る』(朝日出版社)など多数。


レポート🌟

第11回全国オンライン勉強会【伊勢崎賢治氏】2024.8.30(金)

今月は、東京外国語大学名誉教授で平和学研究者の伊勢崎賢治氏をお招きしました✨
伊勢崎氏は、平和構築や紛争予防を専門とし、国際NGOでインドのスラムでの住民運動の組織化や、アフリカでの開発援助に携わってきました。国連PKO上級幹部として東ティモールで県知事を務め、アフガニスタンでは武装解除を指揮されています🌟

今回の勉強会では、戦争の現実や停戦に向けた取り組みについて貴重なお話を伺いました。

まずは、くしぶち本部長からのご挨拶😊

皆さん、こんばんは。ご参加いただき、心より感謝申し上げます。伊勢崎賢治さんとはNGOピースボート時代からのお付き合いがあり、多くを学んでいます。伊勢崎さんは国連PKOでの活動経験があり、具体的な手法で和解に導く貴重な経験を持っています。ウクライナやガザの状況へのアプローチは、私たちが今何をすべきかを強く示唆してくれます。
東アジアでも戦争の準備が進んでいるとされる中、絶対に戦争はさせないという気持ちと知識を共有しましょう。

伊勢崎さん、なんて素晴らしいお方…!
さかぐち事務局長も、10冊ほど(共著を含む)著書を読み、大変影響を受け、政策的な勉強をされているそうです✨

それでは、平和構築・紛争解決のエキスパート、伊勢崎氏の講演の中身に触れていきたいと思います🌟



🌟ウクライナ戦争の予兆と緩衝国家の役割

2021年12月、伊勢崎氏はロシアの学者たちとともにノルウェーのトロムソでの会議に参加。この時点で、ロシア軍はウクライナ国境に10万人を集結させ、戦争の勃発が予測されていました。そのような中、会議ではロシアの動向と緩衝国家の運命について議論が行われました。緩衝国家とは、大国間で戦争を防ぐクッションの役割を果たす国で、しばしば代理戦争の場となります。バルト三国などは安上がりな「トリップワイヤー(仕掛け線)」化され、超大国や軍事同盟にとっては、それらの緩衝国家を犠牲にして敵国の進軍を遅らせる装置になっているとのこと。ノルウェーやフィンランドなどの緩衝国家は、ロシアを刺激せず、話し合いができる関係性を保つことで世界の平和に貢献することを安全保障の根幹にする考え方と、NATOの一員として安全を守るべきとの考え方がせめぎ合ってきたそうですが、日本も緩衝国家としての運命を自覚した上での安全保障を考える必要があるとのこと、大変説得力のあるご指摘でした。


🌟代理戦争の本質

代理戦争とは、大国が小国を利用して直接の戦争を回避し、敵を弱体化させる戦術です。ウクライナでの内戦もその一環で、ロシアとアメリカ、NATOが関与しています。


🌟北欧諸国の戦略的対応

ノルウェーは、ロシアとの国境を持つ唯一のNATO加盟国で、冷戦後も慎重な外交政策を維持してきました。しかし、2014年のロシアによるクリミア併合後、アメリカ軍の駐留や核兵器の通過を許可するなど、方針に変化が見られました。フィンランドやスウェーデンも長く中立政策を取っていましたが、ウクライナ戦争を受けて、特にフィンランドはロシアとの国境線で緊張が高まっています。


🌟日本の紛争予防への貢献

日本は、紛争予防において重要な外交的役割を果たしてきました。例えば、PLOのアラファト議長を西側諸国で初めて公式に招待し、その後のオスロ合意に繋がったことや、JICAがフィリピンのミンダナオ紛争で和平交渉を推進した例が挙げられます。これらの成果を活かし、日本は再び積極的に平和外交を進めるべきだと伊勢崎氏は述べています。


🌟米朝戦争のシミュレーションとその知見

2017年、伊勢崎氏は米軍主催の「PACC」会議に招かれ、米朝戦争のシミュレーションに参加しました。特に「斬首作戦」で金正恩氏が排除された場合の北朝鮮の軍事占領について議論され、同盟国にそのような大規模な兵力を提供する余力がないという結論に至りました。この知見は、ウクライナ戦争や台湾有事においても重要な参考材料となっています。


🌟朝鮮半島と国連軍の矛盾

朝鮮半島の38度線に位置する板門店は、北朝鮮と韓国が対峙する緊張の場です。ここにはいわゆる朝鮮国連軍が配備されていますが、伊勢崎氏はこの国連軍を「ゾンビ」と呼び、存在自体に疑問を呈しています。特に日本は、米軍との不平等な地位協定において他国より不利な立場にあり、米軍に依存する「従属国家」であると批判されました。


🌟未来への展望と市民社会の役割

伊勢崎氏は、朝鮮国連軍の「ゾンビ」状態の解消が必要だと訴えていますが、国連内ではこの問題がほとんど議論されていません。まずは日本、韓国、アメリカの研究者や市民社会が連携し、それぞれの政府に働きかけることが重要です。さらに、日本はノルウェーのように緩衝地域の非武装化や、ジェノサイドや戦争犯罪に対する国内法の整備を進める必要があります。憲法9条を守りつつ、国際法に基づく法的枠組みを強化することが求められます。



上記が伊勢崎氏からお話いただいた主な内容です🌟

講演タイム終了後は、質疑応答へ☆
ひとつひとつ丁寧にお答えいただき、講演第2部が始まった?!(; ・`д・´)
と思うような中身の濃い時間となりました。その一部を簡単にご紹介します。


ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナの対立を解決する上で、日本の役割や可能性は何か?

日本が停戦交渉に関与するためには、リスクを取る覚悟のある政治家の存在が不可欠です。戦争犯罪者との交渉には大きなリスクが伴い、その覚悟を持つリーダーが現れることが大切です。正義と停戦のバランスを理解する世論が広まれば、仲介者が出現しやすくなるでしょう。また、戦争犯罪を訴追するには時間と資金が必要です。日本は人権や戦争犯罪への対応を国是とし、長期的に支援できる国になるべきです。
質問:アメリカは占領統治を含む戦争レビューの文化があり、戦争の成果を客観的に評価していますが、日本には自衛隊の海外派遣に対する客観的な評価や検証がなく、不信感を抱いています。日本が戦争の本質を直視し、事実を受け止めるためにはどうすればよいか?
回答:日本が戦争の本質を直視しない理由は、政治家の知識不足や政治文化の欠如にあります。例えば、朝鮮国連軍の役割や地位協定に関して、自民党の多くの議員が理解していない現状があります。朝鮮有事のシミュレーションも行われていません。ジェノサイド条約への未加盟も問題であり、国際社会との協力が不足しています。これらを改善するには、超党派で取り組むことが重要です。

小学生の子どもたちに戦争の現実を伝える際、大切にすべきことや必ず伝えるべきことは何か?

子供に戦争や凶悪事件について教える際、感情的な反応だけでなく、「なぜそうなったのか」を一緒に考えるスペースを作ることが大切です。お説教にならないように、軽く「なぜあの人はそんなことをしたのか?」と問いかけるだけで十分です。それが戦争を理解するきっかけになります。

日米地位協定の改定や9条2項の問題について、互恵性を確保するためには憲法改正が必要ではないか?

日本は既に軍事大国ですが、軍事過失を裁く法体系が整っていません。これは9条が原因ですが、9条を変える必要はありません。憲法を維持したまま、他の法律で対応できます。憲法改正を議論することで思考停止に陥ることを避け、法律で問題を是正すべきです。

山本太郎代表が指摘する国連憲章の敵国条項について、条項が死文化しているという説もありますが、リアルな国際政治ではどのように考えるべきか?

敵国条項は死文化しているとは限りません。もし本当に死文化しているなら、国連憲章が改訂されるはずですが、現状では改訂されていません。特に中国やロシアが反対する可能性があります。この条項がある限り、日本が不穏な動きをした場合、国連安保理の許可なしで攻撃される可能性が残っています。これはある意味、9条と同様に日本にとっての抑止力にもなり得ますが、安心はできません。



次に、今回の勉強会について、Xでのご感想をご紹介します👇
つぶやいてくださったみなさま、感謝です☆

◆れいわの勉強会、いつも素晴らしい講師の素晴らしい講義だけど今回は知らないことだらけで、本当に勉強になりました。
敵国条項がある事で日本への戦争抑止の有効性があるんですね。
伊勢崎さんの本も購入します。

◆伊勢崎賢治さん、貴重なお話ありがとうございました。
さすが紛争解決に関わってきた方だけあって知らない世界の話も多くとても勉強になりました。
旧敵国条項も、やっぱり死文化などしてなかったんですね。

◆目からウロコだらけでした。
日本ができることはまず外交がきちんとできる政治家を増やすこと。
市民が声を上げ続けること。
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れいわの勉強会はいつも内容が濃い!

最後にくしぶち本部長より、

伊勢崎さん、ありがとうございました。いつもですが、今回は特に、伊勢崎さんのシニカルな笑いが、現場のリアルな状況をはっきりと浮き彫りにしてくれましたね。特に後半では、日本の本質や構造的な問題について、改めてみんなで考える機会を持てたと思います。
伊勢崎さんのお話で改めて感じたのは、外交や安全保障は国同士だけでなく、市民社会が政府を動かし、それを国境を超えて横に広げることが大切だということです。核兵器禁止条約も被爆者やNGOが中心となって、中堅国家と繋がって作ったものですし、もっと声を上げ、日本政府を動かしていく必要があります。れいわがその中心になっていくことが使命だと感じました。今日は本当にありがとうございました。

とのコメントをいただき、勉強会は終了☆


今回の勉強会を通じて、ウクライナ戦争の背景や代理戦争のメカニズム、緩衝国の役割について深く理解することができました。また、日本がこれまで果たしてきた平和外交の重要性を再認識し、今後はさらに積極的に関わるべきだと感じています。
伊勢崎氏が米軍のPACC会議などに呼ばれる際は、外務省や防衛省を経由せずに直接連絡が来るとは、本当に驚きです!(; ・`д・´)
代表の街宣で度々取り上げられる「敵国条項」についても、依然として有効であることが再確認できました💦
しかし、ジェノサイドや戦争犯罪を定義し、指導者や上位者の責任を追及できる国内法の整備は憲法とは関係なく可能であるという点に希望を感じます。
伊勢崎氏が「れいわ、本当に僕は応援したいですねと。太郎さんはこの話わかってくれた。」とおっしゃってくださったことに、大変励まされました!

このレポートを通じて、紛争問題への理解が深まり、より良い社会を共に考えるきっかけになれば幸いです!

伊勢崎さん、そしてご参加のみなさま、遅い時間までありがとうございました🌟(*´ω`*)

伊勢崎さんの著書もぜひチェックしてみてください!
 ↓
〇14歳からの非戦入門  – ビジネス社 2024/5/23
〇戦争はどうすれば終わるか? ウクライナ、ガザと非戦の安全保障論  – 集英社 2024/2/16
〇主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿(共著・布施祐仁)  – 集英社 2017/10/26
〇本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る  – 朝日出版社 2015/1/15


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