「インクルーシブ教育について」

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小国喜弘氏

東京大学教育学部附属中等教育学校長、東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究副センター長、教授。博士(教育学)。
成城大学文芸学部専任講師、首都大学東京(現 東京都立大学)都市教養学部人文社会系准教授、早稲田大学教授などを経て、現在に至る。専攻は日本の教育実践史。大学院時代は佐藤学らに師事。

学校教育に関する言説・制度・実践などを歴史的に対象化することを目的とし、日本教育史の研究に取り組んできた。特に1945 年を画期とする戦前から戦後にかけての教育方法の特徴をナショナリズムとの関連に焦点をあてて読み解くことを課題としている。近年は障害児教育の歴史の再検討を手がかりに、インクルーシブ教育の問題に取り組む。

代表著書としては、『戦後教育のなかの〈国民〉』『障害児の共生教育運動: 養護学校義務化反対をめぐる教育思想』『戦後教育史-貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで 』などがある。木村泰子氏との共編、小学館『「みんなの学校」をつくるために特別支援教育を問い直す』も有名。


レポート🌟

第9回全国オンライン勉強会【小国喜弘氏】2024.6.28(金)


テーマ「インクルーシブ教育について」

今月は、東京大学大学院教育学研究科教授の小国喜弘氏をお招きし、インクルーシブ教育についての勉強会!🌟

小国先生をご紹介くださったのは、本日もご参加いただいている木村英子参議院議員☆
「インクルーシブ教育なら、小国先生しかいない!」とご推薦✨
また、今日は舩後靖彦参議院議員にもご参加いただき、心強いです!

講演前にくしぶちさん、舩後さん、木村さんからご挨拶😊

くしぶち本部長☆
インクルーシブ教育は子どもの頃から始まるということ、いじめや不登校、校則の問題なども含め、子ども中心に子どもから考えていく、インクルーシブが、これからの社会の在り方なんだという話をお伺いし、とても目から鱗のような学びが多かった。今日はとても楽しみにしています。

舩後参議院議員☆
障害で分けられることなく、地域の学校で共に学び育つことが、差別のないインクルーシブな社会をつくる基礎。
日本は障害者権利委員会の勧告に対しても、多様な学びの場に分けて行うと、特別支援教育を中止することは考えていないと文科大臣が答えており、同じ教室で多様な学びを保障するインクルーシブ教育の根幹が見えてこない。
先生のお話から学び、今後の国会活動や党の活動に役立てたいと思います。

木村参議院議員☆
小国先生には国民生活調査会の中で参考人として来ていただき、様々な課題について提言いただいた。
私は小さい時から施設と養護学校で育ち、健常者と分けられて過ごしてきたので、地域に出た時に社会性を学ぶことに、かなり時間がかかった。
健常者の人と障害者の人が幼い時から同じ学校で学び、同じ環境で生活をすることがいかに大事かを実感しています。
小国先生と共にインクルーシブ教育を目指して活動を続けていきたいです。

お三方のご挨拶だけでも、とても学びになりますね…!


それでは、講演内容へ☆

「この問題については、当事者の方々や保護者、そして学校の先生方も心を痛めておられることが多いという現状です。このような機会をいただけたことをすごくありがたく思っております。」と、小国先生😊

・特別支援教育は手厚く、子どもを大切にするイメージ
・専門性の高い先生が少人数で指導

みなさま、なんとなく特別支援教育に対してこのように思われていませんか?

実はこのレポートを書いている私自身が、子どもを普通学級に入れるか、支援級に入れるか迷った経験があり、子どもの為にはどちらがいいのか?手厚い支援級がいいのか…と思っていました。
しかし、これが必ずしも真実ではないということを教えていただき、考え方が180°変わりました…。(;゚Д゚)

一般的に、特に知的障害のある子どもを普通学級に入れることに対して、「勉強が理解できないからかわいそう」という議論が広まっていますが、これは明らかな差別だということ。
もし、障害を持つ人に対して「働けないから健常者と一緒に暮らすのはかわいそう」と言ったら…?


次に、日本の状況について

・少子化なのに特別支援教育を受ける児童生徒数は2.9%から6.3%へ倍増
・特別支援学校や特別支援学級(16万人から35万人)も増加
・通級による指導も近年制度化され増加
・不登校児童生徒数やいじめの増加
・教員の精神疾患による休職者数の増加
・小中学生の自殺者数の増加

これらの同時に起きている問題から、学校が子どもにとっても教師にとっても生きづらい場になっていることがよくわかります…。
現状は、不登校・居場所・特別支援教育の充実などは対症療法的な解決策が主流であり、根本的な解決に向けた取り組みが不足しているんですね💦


2022年9月に障害者権利委員会から、日本政府に対して分離型特別支援教育の中止と通常教育への参加機会の確保を求める勧告がされました。
これに対し、文科省は反論しましたがインクルーシブ教育の利点を議論することは、奴隷制やアパルトヘイトの廃止を議論することと同じだと小国先生は説明しました。
(ユネスコの冊子「インクルージョンと教育」の序文を引用)


「インクルーシブ教育が大事だという理念はよくわかっている。だけど、お金も要るしすぐにはできない。これは時間をかけて実現するべき理想。」
「インクルーシブ教育なんかをして、障害を持っている子と障害を持ってない子を一緒に教室で学ばせたとしたら、それは学力が下がりませんか?」
と、このように学校関係者はだいたい言うそうです。
学力が下がりませんか?って、明らかな差別なのに💦
ここでは、男女共学の実現を例に、インクルーシブ教育に対する懸念と共通点について論じてくださいました。

男女共学導入時、多くの教育関係者は、男子児童の学力低下を懸念して反対した。しかし、人権平等の実現という観点から推進され、現在では当たり前。これの、今は障害児障害者バージョンが起きているということ。同様に、インクルーシブ教育に対する学力低下懸念も、人権理念に基づいた議論によって克服していく必要がある。

なるほど…!わかりやすい例えですよね。
学校は、子どもたちが多様な価値観や考えを持つ人々と協働し、助け合う経験を積む場であるべき!
インクルーシブ教育は、子どもたちが互いの違いを尊重し、共に学び、成長できる環境を実現するものであり、民主的な共生社会の原動力となるものだということです。
仲良しの社会をどうつくるのかではなく、舩後議員や木村議員がおっしゃったように、今、社会において差別があるからこそやらなくてはいけないことなんですよね。


小国講師はこうも指摘されました。
多様な市民が共生するインクルーシブ社会の実現には、学校が地域改革の拠点となるべきですが、現在は規律やスタンダードを強調する教育基本法改正により、画一的な授業スタイルが推進されています。
「背筋ピン、手はお膝にぺったんこ、足は床にぺったんこ、発言の仕方など、あるべき姿が示され、教室に掲示される。」
「私語がいけない」
「授業中は座っていなくちゃいけない。」
など。
だから多動と言われる子どもが生まれるわけで、このようなルールが、多動性障害とされる子どもたちの増加につながっている可能性がある。
アクティブラーニングなど、子どもたちが自由に動き回り、意見交換できるような授業スタイルであれば、多動性の子どもたちも能力を発揮しやすくなるでしょう。わからないことがあっても、周囲の目を気にして質問できない環境では学習意欲や自己肯定感が低下してしまいます。こうした窮屈なルールを改善することで、発達障害とされる子どもたちの数は減少するかもしれません、と。

この考え方には今まで気が付きませんでした。まさに目から鱗!
つまり、授業中にびっちり窮屈なルールを課し、それに対応できない子どもは発達障害とされ、通級による指導の対象になる。
これが、日本が考えるインクルーシブ教育システムだなんて唖然💧

特別支援学級に通う子どもたちが、普通学級の生徒から「お客様」扱いされたり、「バカ」と言われたりして、疎外感や普通学級への拒否感を抱くケースが多いです。音楽、体育、美術などの実技系授業で普通学級の生徒と交流する機会があっても、上記のような問題が生じています。特別支援学級に通う子どもたちは、普通学級の生徒と比べて劣っているという意識を植え付けられ、自己肯定感が低下してしまいます。
就学時健診や特別支援学級への振り分けを通して「自分は障害児である」というアイデンティティを認識させられます。

障害だけでなく、様々な属性を持つ子どもたちの包摂が十分に議論されていない現状もあります。子ども一人ひとりの権利保障とインクルーシブ教育の関係性が十分に検討されていません。子ども同士の関わりが、社会性の発達において重要です。

発達障害や知的障害の子どもが普通級にいる場合、特別支援教育支援員がそばにいることが多いですが、支援員は多くの自治体で研修を受けておらず、雇われた際に「あの子をケアしてください」と言われるだけです
時間給で働いているため、勤務時間中はその子の面倒を見なければならないと考え、休み時間も含めて常にそばにいることが多いです。その結果、周りの子どもたちがその子と関わる機会が失われてしまう状況が生じています、と小国講師。

まさか、良かれと思っていたことが裏目に出てしまっていたなんて…💦


次に、大阪市立大空小学校の初代校長でもある木村泰子先生が子どもたちから聞いたという、
『合理的配慮を受けながら合理的排除された子どもたち』と
『排除された子どもの周りの子どもたちの真実』の声をご紹介いただきました。

■何をしても怒られた。
■「特別な子」としてしか見てもらえなかった。
■みんなと一緒に遊びたかったけどいつもいじめられた。
■自分はどうせ迷惑をかける悪い子なんだ。
■学校に行ってもいやな思いをするだけだから、行かない方がまし。
■大人なんて誰一人信用できない。
■学校は牢獄だ。
■特別支援学級は独房だ。
■空気が吸えない。

…本当に胸が痛みます。特別支援教育の現状が子どもたちにどれほど深い傷を与えているのか。特別支援教育の問題の深刻さを痛感しました。
子どもたちは、怒られることや「特別な子」として扱われること、いじめられることに苦しみ、自己嫌悪や学校への不信感を抱いているんですね…。
迷惑をかける悪い子だと思い込むなど、子どもたちが抱える辛さは想像を超えています。
現状のインクルーシブ教育の見直しと改善が急務であると強く感じました。

続けて、排除される子どもが存在することで、他の子どもたちにも「自分も排除されるのではないか」という恐怖心が生まれます。この恐怖から、自分が排除されないように必死に頑張る子どももいます。また、排除される子どもを「自分とは違う格下の存在」と見なし、表向きは我慢しても、教師がいなくなるとすぐに怒鳴ったり迷惑をかけたりするケースも見られます。しかし、こうした行動は本来SOSのサインであり、排除される子どもこそが最も守られるべき存在です。
排除される子どもがいると感じるのは、必ずしも子どもたちの自然な反応ではありません。教師が「迷惑」と感じることを子どもたちが間接的に受け取り、その影響を受けている可能性があります。こうした環境が続くことで、隔離・分離が子どもたちの成長や社会参加を阻害し、様々な問題を引き起こすことになります。

日本の社会では、隔離や分離の弊害が十分に理解されていません。社会モデルは、医学モデルとは対照的に、環境を変えることで困り感を軽減・克服できると考えます。例えば、階段にスロープを設置することで車椅子の人が移動できるようになるように、環境を変えることで多くの人が恩恵を受けられるのです。

そして、自立とは一人で何かをできるようになることではなく、むしろ依存先を増やすことです。障害者とは、依存先が特定の人に集中している人を指します。つまり、自立とは依存先を増やすことなのです。


次に、TBSの報道特集『インクルーシブ教育が変えるもの』のエピソードを動画でご紹介いただきました。

〈要約〉
和樹さんは学校で6年間特別支援学級に在籍しましたが、その後、通常学級に移行することができました。この移行は、親や周囲からの圧力に直面しながらも、校長や担任教師の支援と和樹さんの熱意によって実現した。特に担任の曽我部教諭は初めての経験でしたが、和樹さんの成長を見守り、彼のペースに合わせて支援しました。結果として、和樹さんの表情が豊かになり、クラス全体の雰囲気も変わり、成績も向上!和樹さんの姉も最初は反対していましたが、友人が和樹さんの家に遊びに来るようになったことで考えが変わります。

インクルーシブ教育は、授業の場だけでなく学校生活全般においても共に生きることを学ぶことから始まります。日本では教育の議論が授業に限定され、共に学ぶことが難しいという認識が広がっています。
インクルーシブ教育を実践する上で、まずは個々の子どもの良さを認識し、お互いに認め合える関係を築くことが重要です。このプロセスにおいて、子ども同士の結びつきが生まれ、様々な葛藤や小さな事件を通じて学びが深まります。
和樹さんの卒業後、彼の影響で教育に関心を持ち、教師を目指す同級生が現れ、学級や学校全体がよりインクルーシブな環境になっていったとのことです。
と、動画の後に小国講師より。

普段の教育現場での理解と関わりが重要だということがよくわかりますね!✨

小国講師は、インクルーシブ教育は、実は特別な教師の専門的な知識・技能、新しい制度や特別な予算が必ずしも必要ではなく、明日からでも始められることを強調されました。
それがなぜか、10年経っても20年経っても日本ではできないかもしれない。と言われている、とのこと。
みなさんはどう思われますか??(;´・ω・)


講演タイム終了後は、質疑応答へ☆
今回は、その質問の多くが当事者の方からで、切実な声をたくさんお寄せいただきました。
本当にインクルーシブ教育をこれから進めていくことの意義を学ぶ良い機会となりました。


ここで、今回の勉強会について、Xでのご感想をご紹介👇
つぶやいてくださったみなさま、感謝です☆

◆とても勉強になりました。最後のビデオを見て、教育予算がなくても、教師が障害支援の専門教育を受けてなくても、一人の教師が受け入れてみようと心を開けば、試行錯誤しながらも、他の子どもたちも一緒に成長できることを知りました。

◆インクルーシブ教育は明日からでもできる。そう確信しました。
そのためには社会の理解が必要。「インクルーシブ inclusive」は難しいので「一緒教育」とかはいかが?

◆特別支援学校の教員でした。当事者の方々の生の声を聴くことができて良かったです。ありがとうございました❣️



最後にくしぶち本部長より、

「れいわ新選組が今日のご提言を受けてどんどん発信をしていき、批判と建設的な提案ということにぜひともつなげていきたい。
今日、小国先生がおっしゃったように、仲良し社会になることではなく、目の前にある差別をどう克服するかは、明日からでも取り組むべき課題だということを、党内でも、そしてボランティアのみんなとさらに共有を広げていきたいと思います。」

とコメントをいただき、勉強会は終了☆


小国講師の熱意とインクルーシブ教育に対する深い理解に触れ、大変勉強になりました。
教育基本法の改正による学校現場の閉塞感や、不登校の増加、特別支援教育の対象生徒の増加といった現状についての議論は、教育の現場が抱える課題の深刻さを再認識させられました。
私たち大人が、子どもたちの声をしっかり聞き、向き合っていかなければと思います。

今日の勉強会を受けて、れいわ新選組としても具体的なアクションにつなげていきたいですね!(^_-)-☆
今後、差別を克服し、誰もが共に学び成長できるインクルーシブな社会を目指して、私たち一人ひとりができることを考え、行動していくことの重要性をより強く感じました!

小国講師、そしてご参加のみなさま、遅い時間までありがとうございました☆

小国講師の著書はコチラ!
 ↓
〇戦後教育史-貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで – 2023/4/20
〇「みんなの学校」をつくるために:特別支援教育を問い直す – 2019/3/20


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